気づいた人が気づいたことを。できる人ができることを。
村山 雄司さん
三竹生コンクリート株式会社 社長
――愛知県豊田市で生コンクリート会社を経営する村山 雄司さん。ひょんなことから、よこはまチャイルドラインを支援してくださることになりました。チャイルドラインが集めたテレフォンカードを三竹生コンクリート株式会社にお渡しし、それで自社の電話代を支払っていただく代わりに、チャイルドラインに同額の現金を寄付していただく、というかたちの支援です。今回は、村山さんにお話をうかがいました。
―― チャイルドラインへのご支援、本当にありがとうございます。
村山 いやあ、たいしたことはしていませんよ。企業にとっては、きわめて取り組みやすい支援だと思います。チャイルドライン支援センターの常務理事、村上敏也さんからお話をいただいて即断しました。
こうして、だれかのお役に立てることはとてもありがたいですね。何しろ先代から社長を受け継いだ15年前には考えられなかったことですから。当時は借金が6億3000万円もあり、どうなるんだろうと途方にくれていました。社長といえど、財布は持っていても、小銭ばかりでお札はなく、ひととのつきあいもできませんでした。
でも、みんなで力を合わせてU字回復を遂げ、おかげさまで優良企業事例として、中小企業大学校や金融機関から講演を依頼されるまでになりました。
生コンクリートというヒット商品も生まない企業がこれほど再生するのは『奇跡』だと、主要金融機関から言われました。とにかく、信頼していただけるよう誠実にこつこつと仕事を続ける。わたしたちは、ただ当たり前のことを当たり前にやってきただけなんですけれど。
――すばらしいですね。その原動力になったのは何なのでしょうか。
村山 ひと言でいえば、学び続けてきた、ことですね。社長でいることに安穏としているのではなく、社長は自ら学び続けなければなりません。なぜなら、中小零細企業ほど社長がどんな判断をするかで業績が大きく変わってしまいますから、学ばない経営者はダメなのです。私は、社長になる3年前から中小企業大学校などで財務をはじめ、さまざまなことを学んできました。その数、100回以上。もちろん、いまも学びつづけています。
そんな空気は社員にも伝わっていると思いますね。そして、やっぱり人が成長しないと会社も成長しませんからね。
――それって、よこはまチャイルドラインの考え方そのものです。びっくりしました。受け手が成長しないと、チャイルドラインのクオリティも上がりませんから、研修にはとくに力をいれています。
――村山さんの子ども時代の話を聞かせてください。
村山 うーん、幼稚園から中学校までだれかの子分でしたね。どちらかといえば、いじめられっ子で、自由が欲しかったですね。こつこつ努力するタイプではないので、勉強もあまりしませんでした。
ただ、本を読むことは好きで、おとぎ話からSFまでよく読んでいました。ちょっと現実逃避だったのかな。
いまの私はずいぶん変わりましたね。子ども時代のいやな思い出も肯定的に捉えられるようになりました。いやなことも認めないと、いまはありませんから。
――いまの村山さんからは想像できないような話ですが、人間はその気になれば、変われるんですね。それは大きいと思います。
村山 過去のどんな自分も自分です。いまがOKであれば、そんな自分も認めることができるし、感謝もできます。
――ところで、先日、よこはまチャイルドラインの現場にも足を運んでくださいましたね。
村山 ええ、とにかく、背すじがしゃんとしました。ある種の緊張感が漲っていて、チャイルドラインがやっていることの意味や重みを教えていただきました。そして、絵本の読み語りで子どもたちと接しているからでしょうか、電話の向こうの子どもたちが見えた気がしました。大切な大切な活動ですね。
――村山さんの社会貢献はチャイルドラインだけではないそうですね。
村山 お恥ずかしいのですが、縁あって小中学校での絵本の「読み語り」は14年も続けています。ほかにも、石巻の同業者への生コン車の寄贈、津波被害を受けた東北3県の図書館に自ら運転して絵本を贈る活動、それに保護司などですね。
――うーん、すごいですね。どこからこんなエネルギーが湧いてくるのですか。
村山 気づいた人が気づいたことを。できる人ができることを。ただ、それだけです。
うちの会社には、営業がいないけれど、社長の生きざまが営業だといってくださる人もいます。そんな信頼してくださる人を裏切ることのないよう、これからもできることを地道にやっていきたいですし、学び続けていきたいですね。そして、いまのスタッフと1日でも長く仕事をしたいです。
これからも、末長くチャイルドラインを応援していきますよ。
――村山さんとの出会いに感謝です。末長くよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。