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熊本便り 21

 

「ベイスターズ観戦記」

 

 これは「熊本便り」なのだけれど、それをも上回る体験を横浜でしたので、今回はそのことについて。

 ああ、びっくりである。しかし、すんごくうれしかったし、勉強になった。やり方ひとつで、こうもひとは変われるのだと。

 ひとむかし前のベイスターズも強くはなかったけれど、それよりなにより、お客さんが入らなくて、赤字続きで、売りに出される始末。大洋からTBS、そしてDeNAへと。

思い起こせば、十数年前、ベイスターズが優勝したときだけがすごく盛り上がり、そごうの前には「大魔神神社」もでき、多くの人がお参りに訪れた。しかし、ファンも根っからのファンではなく、にわか仕立てにすぎなかったので、あっというまに球場には閑古鳥が鳴くことになった。

そんな歴史を知るわたしとしては、ベイスターズをとりまく環境の変わりっぷりに「あっぱれ」を送りたい。とにかく、すごい。ひと、ひと、ひと、ひとの波。それも、多くがベイスターズのユニフォームを着ているではないか。もちろん、うちの娘一家も5人全員そろいのユニフォーム姿。バックネット裏のボックス席だったが、まわりももちろん全員ユニフォームを着ている。いろんなユニフォームがあることも知った。

「この席は取れないんだからね。苦労したんだ」そうだが、5900円の5人分で約3万円もするのに、「えーっ」である。この日の相手は中日で、以前なら客席はがらがらなのに、ほぼ満員。この日が誕生日の石井選手が打席に立つと、みんなで「ハッピーバースデー」の大合唱。看板選手の筒香が登場すると、盛り上がりは最高潮。いやあ、選手もやりがいがあるし、うれしいでしょうね。

そして、いつのまにか応援ソングが「DeNAベイスターズ」に変わっていて、みんな大声で歌っている。DeNA、やりますなあ。聞けば、市内の全小中学生にヘルメットをプレゼントしたという。うちのおチビちゃんたちも、帽子からユニフォーム、バット、メガホンまで揃えていて、まるごとベイスターズ。刷り込み効果できっと、おとなになっても生粋のファンでいるに違いない。DeNA、貧乏球団をみごとに建て直し、経済効果もさることながら、しっかりと横浜市民のこころをとらえているではないか。おみごと。あっぱれ。

こうして地元に根付き、市民のこころをひとつにするというのは、だれにとっても心地よいものなのだろう。広島にカープが、名古屋にドラゴンズが、福岡にソフトバンクがあるように、横浜にベイスターズ。考えてみれば、子どもも孫もふるさとは横浜。ベイスターズを通して、郷土愛にめざめてくれたら、しめたもの。ありがとう、DeNA。

時刻はやがて7時。茜色に染まりながら暮れなずむ空、美しいグランド、ベイスターズカラーに染まった客席・・うーん、いいなあ。なんだか、とっても幸せ。やっぱり、球場はこうでなくちゃ。ドームじゃないほうがいい。風に吹かれながら、いろんなことを思う。なぜだか、遠い日の若きころのよしなしごとが浮かんでくる。村上春樹が神宮球場の外野席で流れゆく雲を見ながら「小説を書こう」と思ったのも、さもありなんと思う。

 

 

徳丸 のり子  

 

 

 

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