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熊本便り 20

 

「短いあいだに・・・」

 

 約半月ぶりに熊本に帰ってみると、びっくりしたことがいろいろある。それを少し。

 まず、家じゅうのあちこちに蜘蛛の巣が張っていたこと。玄関、納屋はいうに及ばず、密閉度が高い建築のはずの家のなかにも蜘蛛の巣があった。ということは、蜘蛛が家のなかに隠れていたのだろうか。これぞ、「くもがくれ」。あ、ちょっと違うか。しかし、この辺りでは、蜘蛛は縁起のいい動物と考えられており、ねばねばの蜘蛛の巣もなんだかいとおしいから不思議である。

次に、庭が、ああ、庭が、草だらけになっていたこと。少なくとも2週間前までは草はあまりめだたないほどに手入れを怠っていなかったのに、あっという間に草は伸び放題になっているではないか。「この季節は雨が多く、気温も高いので、1年のうちでいちばん草が伸びるから」と、となりの奥さまはおっしゃるが、それにしても、ひとがいない家というのは、短期間にかくも荒れるものだろうか。全国で増え続けている「空き家」は、本当に大問題だろう。とくに、近所迷惑は計り知れない。

そして、農協の直売所に野菜を買いに行ったら、みごとに品物が様変わりしていた。2週間前は幅を利かせていたレタス類はほとんどなくなって、値段も高くなっており、代わって、きゅうり、トマト、なす、とうもろこしの大群が列をなしていた。トマトはなんと中くらいのが5個入りで100円という、びっくりぽんの安さ。

わたしは、ヤングコーンが大好物で、半分に切り、フライパンにオリーブ油をさして、白ワインで蒸し焼きにして食べる。とくに、ひげは格別においしいのである。2週間前はまだヤングコーンが走りで、小さかったので、帰って食べるのを楽しみにしていたのだが、もうかげもかたちもなかった。

 つまり、露地ものの旬とは、かくも短いのである。横浜のスーパーに行くと、だいたい同じような品物が同じような値段で売られており、野菜の旬の短さを感じることはあまりなかった。農家や流通業者の手間ひまを惜しまない努力のおかげとでもいえるのだろうか。

 

 この間、横浜では、1年に1度のチャイルドラインの総会が行われた。例年にもまして、真剣な空気が漂い、ひきしまった総会となった。遠く名古屋から駆けつけてくださった企業の社長さんもいらっしゃって、チャイルドラインが多くのひとに支えられていることをいまさらのように思う。

 そして、記念講演会「あなたはそこにいるだけで価値ある存在」。順天堂大学医学部教授でがん哲学外来の創始者でもある樋野興夫先生を迎えてのイベントも、こころにしみるものであった。先生のあたたかくてユーモアあふれる人柄、ゆるぎない信念、深い知識・・それらが一体となって、濃密であたたかい時間となった。さまざまな光る言葉があって、そのなかのひとつ、「人生は最後の5年が価値を決める」。

 えっ、「先生、死ぬ時がわからないのに、最後の5年はどうしたらいいのですか」との凡人の問いに、先生は珠玉の答えをくださった。「そう、余命がわからないのは人間だけなんですね。ほかの生き物はたいがい、自分の寿命はわかるんですが。はい、それは、きょうから5年です」。

 先生のすばらしいお話はいずれ、情報誌やホームページでもお伝えしますので、お楽しみに。

 

徳丸 のり子

 

 

 

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