• よこはまチャイルドライン
  • よこはまチャイルドライン
  • よこはまチャイルドライン
  • よこはまチャイルドライン

熊本便り 13

 「不条理」ではなく「必然」だった

 

すすきの穂が黄金色にゆれ、澄んだ秋空のもとで山肌を覆い尽くし、光り輝いている。吹き渡る風にゆられて、穂は微妙に色を変えてゆく。まるで、波打つようだ。みごとなまでの美しさ。すすき野原がこんなにも美しいとは。

 ここは、久住山。阿蘇から連なるやまなみハイウェイを通り、久しぶりに訪れた。あれ以来、どうしても踏み入ることをためらっていたところである。熊本には阿蘇山という一級の活火山があり、絶えず噴火しており、温泉も多く、地中のマグマエネルギーはたまりづらい、と教えられて育った。だから、大地震は熊本には縁がないと。それを裏付けるかのように、昨年の地震の前までは「熊本には大地震はない」と言い切り、企業を誘致していた県庁は、ホームページにも「大地震に縁がない熊本県に来ませんか」と紹介していたほどなのだ(もちろん、大地震の後にはそのページは直ちに削除されたが)。

 それなのに、大地震は起きた。不条理というものだろう。阿蘇大橋、阿蘇神社、はもろくも崩れ落ち、あれから1年半たったとはいえ、ミルクロードにはまだ片道走行のところもあり、山肌のえぐれが散見されるなど、地震の爪痕はあちこちにみられる。

 しかし、なのである。大観峰に立つと、阿蘇五山が静かにたたずみ、なにごともなかったかのようにそこにある。その容姿はまるで仏様が寝ているかのような「涅槃像」とよばれるにふさわしい立ち姿で。ああ、阿蘇は世界一のカルデラ、わたしがいま立っている大観峰は外輪山で、何千年前は巨大な山の一部だったのだとあらためて思う。

そして、やまなみハイウェイはドライブに最高の場所である。どこまでも広大な草原、連なる山々、牛たちの長閑かな姿・・・信号はほとんどなく、これほど気持ちのいいハイウェイはめったにない。やがて、現れてくる九重連山も最高に美しい。日本百名山の一座であり、季節ごとにいろとかたちをかえてゆく。春はミヤマキリシマが咲き誇り、夏は色濃い緑、そして秋が深まると九州一の紅葉が楽しめ、冬になると真っ白な銀世界でスキーもできる。いまは、すすきの群生が目もこころも楽しませてくれる。

その昔、川端康成が2度この地を訪れ、『波千鳥』という小説のなかで、登場人物に語らせている。「私は大きい自然の天堂にいるようです。ああ、来てよかった。と私は声に出して言いました」

たおやかで、おだやかな大自然に抱かれていると、自分のちっぽけさが身に染みてくる。日々の問題などたいしたことないと思えてくる。ああ、来てよかった、としみじみ思う。

そして、不条理極まりないと思っていたあの大地震も、何千年何万年という悠久の流れのなかでは、必然の出来事だったと腑に落ちる。阿蘇が阿蘇であるために、久住が久住であるために、必然だったのだと。ひとは大自然の前では無力で、しかし、生きてゆかねばならない、自然とともに。ゆめゆめ、おのれを過信することなかれと。

 

じつは、これも必然なのか。同じ日に事務局のAさんとまったく同じ場所に立っていたのである。ニアミスだけれどね。以下、Aさんの感想も。「ミルクロードを通って久住高原で一泊、翌日は大観峰と九重の吊り橋、塚原火口などに寄りながら湯布院で一泊という日程でした。お天気にも恵まれ、それこそ暑いぐらいでしたが、九州はとてもパワーがあるというか、元気だなあと思ってしまいました。阿蘇の大自然に触れて、日本にもこんな風景があるんだー!と感動しきりでした」

次は、ニューヨークでばったりかもね。

 

 

徳丸のり子

 

 

 

 これまでの 熊本便り はこちらからどうぞ 

 

熊本便り1 熊本便り2 熊本便り3 熊本便り4 熊本便り5 熊本便り6 熊本便り7 熊本便り8 

熊本便り9 熊本便り10 熊本便り11 熊本便り12

 

 

 

 

 

 

《活動ニュース》