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そのひと

カズオ取ったね!

そのひとはタバコを片手にケラケラと私の目の前で笑っている。

ハルキはねー、職人なのよ。だからノーベル賞はまだ先じゃない?

まるで友達のことを話すようにまたケラケラと笑う。

 

先月異国でそのひとと会ったばかり。遊びに来ない?と言われ、5時間半かけてそのひとが住む国へ会いに出かけた。遥々会いに来たというのに、忙しくて買い物も全然行ってないのよと言われ、髪染めやらビールやら食洗機の洗剤やらの買い出しに行き、大荷物を持たされた。家の中は玄関マットなのか足ふきタオルなのかわからない布がひっくり返っているし、炊飯器も床に直接置かれたまま。

遠慮しないで食べてと振る舞われた山盛りのブロッコリーをつまみに飲み明かした。

 

そのひとは、私が高校1年の時の担任。可憐な新任の国語教師だった。

日本語教師として世界を飛び回っている今は、死ぬまで現場で働きたいと言っている。

今いる国では、盲目の人に日本語が教えられるメソッド作りに心血を注いでいるようだ。毎晩徹夜で仕事をするほど情熱が迸っている。床の上の炊飯器も裏返った布もその代償だ。

 

次の派遣国を決めるための一時帰国。

ワクワクドキドキだわ、とケラケラまた笑う。

お湯が2週間出ずとも、自分のインターネットの線が新しく越してきた隣の家に突然つながれてしまおうともへっちゃらな、こんなかっこいいひとと私は35年も前に出会っていたのか…。

おそらくまた私は追っかけのように、そのひとが住む国へ会いに出かけることになるだろう。

 

 

by マイペンライ

《活動ニュース》